落葉の栞

埋もれてしまった良書を貪る日々

プリンセス・マーケティング

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今日紹介するのは『プリンセス・マーケティング』というタイトルの本です。
著者は女性向けのセールスコピーライターで有名な谷本理恵子さん。

ほぼ全てのページに折り目をつけずにはいられないほど具体例が豊富で、女性から見ても女性の気持ちをかなり正確に言語化出来ているなぁと思いました。

スキンケアやダイエットなど女性向けの商品に携わる方からとにかく女心を知りたい方まで、仕事はもちろんプライベートにも役立つ書籍です^^

レバレッジメモ(というより要約)

今いる場所に漠然とした違和感。過去の暮らしを捨てて自分が本来当然いるべきだと感じる新しい世界で生きるまでの個人的な旅。目的は「自分らしさ」を取り戻し、自己充足すること。女性たちは基本的に「自分」という内向きのベクトルで物事を捉えている。

今の自分は何かがおかしいという感覚を持っている女性たちは、いつでも「本当の自分(=プリンセス)」に戻ることができる「魔法」を無意識に探しているような状況にいる。だからこそすべてを、一瞬で、解決できるように思える物やサービスが目の前に現れると強く惹きつけられて買わざるを得なくなる。これが衝動買いの仕組み。

逆もまた然りで、「魔法」だと思えなくなってしまうような要素があると買う気をなくしてしまう。女性は商品の値段と自分の価値が直結しがちで、自分はそれだけの金額に相応しい人間だと思い込む。

女性が買い物をするときの心の動きは、まず先に感情が動きその後で買う理由を頭で正当化する。女性の買い物は男性の買い物よりずっと気軽で競合商品との比較検討がほとんど起こらない。今使っているものを使い切る前に、同じジャンルの商品やサービスを重ねて買うことも日常茶飯事。

多くの女性は「こういう悩みがありますよね?」というアプローチを嫌う。自分が悩んでいると認めてしまえばかりの姿であったはずの現実を受け入れなくてはいけなくなるから。むしろ目の前にない理想的な姿の方によりリアリティを重ね、自分らしいと納得している。日本人女性とはかけ離れた容姿の金髪の美女モデルを起用した広告で商品が売れる。

とはいえ、薄々現実に気がついている。売り手としては現実を目の前に突きつけるよりも、あくまで「他人事」として軽く思い出させるのがコツ。購入前に魔法を疑似体験してもらい、購入後は自信を持って商品を使い続けてもらうためにサポートをする。

女性たちが求めているのは「ちゃんと自分に時間や手間をかけてあげている、私って素敵!」という感情。女性たちが憧れている生活を「手軽にちょっぴり味わえる」ことがポイント。束の間の現実逃避を叶える商品やサービスは人気がある。

女性は商品の値段と自分の価値が直結しがちで、自分はそれだけの金額に相応しい人間だと思い込む。 


特に印象に残ったのがこのフレーズで、奢り奢られ論争が発生するのは女性のこの心理によるものではないかなと個人的に思っています^^;

イシューから始めよ

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人生は何かを成し遂げるにはあまりにも短い


と読者に強烈なインパクトを与えるこの本。
書店のビジネスコーナーへ足繁く通う人は必ず目にしたことがあるかと思います。

この本の著者である安宅さんはイシューを「2つ以上の集団の間で決着のついていない問題または根本にかかわる白黒がはっきりしていない問題 」と定義しています。聞き慣れない言葉ですが、「それは今まさに取り組むべき問題なのか?」と言うのが私なりの解釈です。

本著では、表面的な問いをより深く本質的な仮説に磨き込むためのアプローチから、大元の仮説を答えを出せるサイズまで分解しストーリーを立ててプレゼンを作る段階までのプロセスがまとめられています。

かなり抽象的で難解な言葉が用いられているので今でも完全には理解できていませんが、この本の内容を自分のやっていることに落とし込めたら成長の証と思って今後も定期的に読み直したいと思いました^^


レバレッジメモ

「悩むこと」と「考えること」の違い
「答えが出ない」という前提のもとに、考えるフリをすること
「答えが出る」という前提のもとに、建設的に答えを組み立てること 

「生産性」の定義
どれだけのインプット(投下した労力・時間)でどれだけのアウトプット(成果)が生み出せたか

バリューのある仕事とは?
・自分の置かれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ
・そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い


イシューを見極める(「So What?」の繰り返し)

 ①地球温暖化は間違い
→何を「間違い」としているか曖昧

地球温暖化は世界一律に起こっているとはいえない
→地域の気候に多少のムラがあるのは当然

地球温暖化は北半球の一部だけで起こっている現象である
→地域が限定されたので白黒がつけやすくなる

地球温暖化の根拠とされるデータは、北米やヨーロッパのものが中心であり、地点に恣意的な偏りがある
→地域がさらに限定されたため、検証のポイントが明確になる

地球温暖化を主張する人たちのデータは、北米やヨーロッパの地点の偏りに加え、データの取得方法もしくは処理の仕方に公正さを欠いている
→「データ」に加え、その「取得方法・処理の仕方」に問題があるという仮説があるため、答えを出すべきポイントがより明確なイシューとなる。


イシューを分解する(ex.事業コンセプトの分解)

事業コンセプトの考え方

1.狙うべき市場ニーズ(どのような市場の固まり・ニーズを狙うのか)
・どのようなセグメントに分かれ、どのような動きがあるのか
・時代的に留意するべきことはあるか
・具体的にどの市場ニーズを狙うべきか


2.事業モデル(どのような事業の仕組みで価値提供を行い、事業を継続的に成り立たせるか)
バリューチェーン状の立ち位置はどこに置くか
・どこで顧客を引き寄せるか
・どこで儲けるか

新規事業コンセプトの有望なアイデアを検討するというプロジェクトの場合、事業コンセプト自体が大きな概念なので、このまま仮説を出して本質的な問いを見極めようとしても曖昧な物しか立てられない。そこで事業コンセプトの枠組みを考える。


 プレゼンをするにあたっての心構え

ひとつ、聞き手は完全に無知だと思え
ひとつ、聞き手は高度の知性をもつと想定せよ*1

*1:どんな話をする際も受け手は専門知識を持っていないが、イシューの共有から始め最終的な結論とその意味するところを伝える。受け手を「的確な伝え方」をすれば必ず理解してくれる存在として信頼するということ。

善意という暴力

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10月になって本格的に軽減税率が始まりましたね。Twitterでは「イートイン脱税」vs「正義マン」がトレンドに上がったこともあり、色々と面倒なことになっているなぁと思う今日この頃です。一見するとこの「正義マン」は善意に基づいて悪を指摘しているように思われますが、実際のところバッシングすること自体が快感になっているのではないかと思うんですよね...。

と言うわけで、今回紹介するのは『善意という暴力』という本です。善意の正体とは「相手も自分と同じように感じるべきだ」という押し付けであり、人々が感情だけで動く社会は危ないと警告しています。


今日のレバレッジメモ


なぜ裏切り者に対して嫌悪感を抱くのか

進化生物学の立場からすると遺伝子を最大限に残すことが合理的。
一方で、共同生活を営む上で利益だけを受けて義務を果たさない人を許していると共同体を維持することができなくなってしまう。
→協力的な社会を築く進化の過程で裏切り者を排除しようとする認知メカニズムを獲得した。


スポットライト効果

人は、他人のことを自分のことのように思うことができる。しかし仲間とそれ以外では、仲間を優先する。人間は無限に共感できるわけではないのだ。

 「あなたが寄付をすれば、ロキアと言うこの写真の女の子の命が救われます。」
マラウイでは300万人を超える子供達が食料不足に苦しんでいます。」

この2つの文章でどちらが寄付を多く集めるか実験したところ、圧倒的にロキアに焦点を当てた前者の方が寄付が多かったんだそう。


理性について

・私たちの理性には、理解しやすいように物事を理解するだけでなく、理解したいように理解してしまうと言う困った性質がある。
・理論的であると言うのは、これまでにわかっている枠組みに現実を当てはめることではなく、わかっていないことに対しても合理的に対処することだ。


意志の強さと依存症

・繋がりを求めれば求めるほど、孤独になってしまう
・「薬物依存症の本質は、苦痛を緩和しようとする依存症である。そこから浮かんでくるのは、むしろ、自分の生きづらさをなんとかしようと必死になっている、普通の、むしろ意志が強いと言える人間の姿だ。」
(薬物依存症『ちくま新書』2018)
・「心の痛みを体の痛みに置き換えている。心の痛みは意味不明で怖いけど、体の痛みなら『あっ、ここに傷があるから痛くて当然なんだ』って納得できる」(薬物依存症『ちくま新書』2018)

昔からどうして自分で自分を傷つける人がいるんだろうと気になっていましたが、最後の一行で胸にストンと落ちました。
 

今日はこんな感じ。


僕は君たちに武器を配りたい

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私はいつも将来に漠然とした不安を抱えて生きているのですが、最近どんな本を読んでもこの時代を生き抜く共通したキーワードがあるということに気づき始めました。恐らく今は「ゲリラ戦」「ニッチ」「ロングテール」が求められる時代になってきているのではないでしょうか。

今回紹介する瀧本哲史さんの本もまた、ゲリラ戦を生きぬけと謳っています。

自分の時間と才能を何につぎ込めばリターンとしてマネタイズできるのか。誰も正解は教えてくれないですし、自分の頭で考えないと食い物にされてしまいます。

ただブームに流されずニッチ市場に身を投じるのはとても勇気が要りますし、これからこの市場は伸びていくだろうと判断するには私はまだまだ勉強不足だなと実感するばかりです。

レバレッジメモ

コモディティとは

コモディティとは「スペックが明確に数字や言葉で定義できるもの」
資本主義においてコモディティは買い叩かれる

私たちは誰もがかけがえのない存在になりたいと考えると思いますが、どうしたらそのような存在になれるのかは誰も教えてくれません。そこでブームの仕掛け人は「資格を取れば一生安泰だよ」というストーリーを語り出します。気づけば資格を持っていること自体が特別なことではなくなってしまい、替えの効く存在となってしまうと言います。何とも皮肉な話ですよね。


お金と資本主義の概念

・お金は市場に売りに出されるどんなものとも交換できる。
・時間が減ってもお金は腐ったりしないし、価値が目減りすることもない。
・資本主義社会の参加者は基本的に全員がお金をたくさん得ること=富を目指す。
・資本主義は人間の欲望に合致した社会を進歩させるシステムが優れている
・その反動として商品の差が無くなり、値段が限界まで低下するコモディティ化現象が起きている。

この世界で生きている以上、まずは資本主義のルールを知り尽くしたい。前半のお金の概念をもっと詳しく知りたい方は『エンデの遺言』を読んでみるのがオススメです。ちなみに、賃金が下がった本当の理由は派遣制度の導入ではなく技術革新によるものらしいですよ。


これからどんな人が生き残るのか

1.商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
2.自分の専門性を高めて高いスキルによって仕事をする人
(エキスパート)
3.商品に付加価値をつけて市場に合わせて売ることができる人
(マーケター)
4.全く新しい仕組みをイノベーションできる人
(イノベーター)
5.自分が起業家となり、みんなをマネジメントして行動する人
(リーダー)
6.投資家として市場に参加している人(インベスター)

実はこれには続きがあるので、気になる方は本書を読んでみることをオススメします。


マーケターとは

・マーケターとは差異を考えられる人間のこと
(ストーリーを生み出し最も適切な市場を選んで商品を売る戦略)
・商品で差をつけることは難しい
 顧客が共感できるストーリーを作ること
・自分自身も「商品」
 売る「場所」を変えることで全く結果が違ってくる
・分からない差異は、差異ではない

ほとんどの産業のコモディティ化が進んでいる中で生き抜くには「差異」が必要で、その差異を扱う職業がマーケターなのだと仰っています。

技術力の違いを感じるユーザーはほぼ存在しなくて、それよりも色がたくさん選べるといったハッキリと目に見える差異の方が大切だと。


投資家の思考法

・ブームとなってから投資すると死ぬ
・誰も投資など考えない時に投資して、まだ儲かると普通の人が思い始めるタイミングで身を引く
・ローリスクより、リスクが取れる範囲のハイリスク・ハイリターンの選択肢をたくさん選ぶ
・投資は長期的な視点で富を生み出し続けるか、人が信頼できるかの2点で判断する



企業を見極めるポイントと働き方について

・企業を見極めるポイントは「お客さんを大切にしているか。」
 顧客を大事にする会社は従業員も大切にする。
・自分の働く業界についてヒト・モノ・カネの流れを徹底的に研究する。

手前味噌になりますが、これに関しては私の選択は本当に正しかったと思います。
業界の表と裏を知り尽くすことを当面の目標としていきたいです。


「超入門」失敗の本質

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今回紹介するのは『超入門 失敗の本質』という本。日本軍と日本企業の失敗を初心者にも理解できるように書かれた『失敗の本質』のダイジェスト版です。

戦争や企業の失敗を過去から学ぼうという趣旨なのですが、経営者でもマネージャーでもない個人がこれから出来ることについてあまり触れられていなかったのが少し残念でした。組織論やマネジメント論に関しては、時間を空けてまた読むと当事者意識を持てそうな気がします。


今日のレバレッジメモ

戦略と戦術について
広告を本格的に運用する前に戦略に時間をかけるのは、取り返しがつかない失敗を防ぐため。

・戦略とは「目標達成につながる勝利」を選ぶこと。
・戦略のミスは戦術でカバーできない 。
・性能や価格で一時的に勝利しても、より有利な指標が現れれば最終的な勝利に繋がらない。 


イノベーション創造の3ステップ」

STEP1 戦場の勝敗を支配している「既存の指標」を発見する
STEP2 敵が使いこなしている指標を無効化する
STEP3 支配的だった指標を凌駕する「新たな指標」で戦う  


「売れないのは努力が足りないからだ!」は本当か?
接客以外にも売り上げ減少と売り上げ改善の要因があるかどうか考える。

仕入れている商品の質
・時代(消費者)の流行
・ライバル店の充実度 etc...

 

 

3分でわかるロジカルシンキングの基本

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感情が論理を上回ったとき人は思考停止してしまうという話を聞いて、ロジカルシンキングの本をもう一度読み直してみることに。

▼感情と論理の関係を理解するとグッと生きやすくなる話
https://note.mu/semlabo/n/n1d97e01b1648


ビジネス書っていうと重厚感があって男性がよく読んでるというイメージがあるのですが、これから仕事に向き合う方や女性の方にも手に取ってもらいやすいように、カバーから本文の余白や図表など全てが計算尽くされてる気がしました。それじゃあ今日も心に留めておきたいなと思ったことを紹介します。

レバレッジメモ

どういう暗黙のルールに基づいて論理を展開しているのかを自分で意識する。相手にとって常識ではないなと思ったら、その部分を意識して丁寧に説明する。


議論をして揉めるのは、当事者たちが重要視する指標が全く違っておりそれを全く共有しようとしないからだと思っています。高校生の頃、学祭でどんな催し物をするか議論している時、「面白いことがしたい」という人と「現実的に出来ることをしたい」という人たちで言い争っていた記憶を思い出しました。

 

ここで「自分の主張が通らないのは相手が悪いからだ」って一方的に決めつけるのは早計ですし、人格否定になってしまうので気をつけたいところです。今思えば、自分の考えやそこに至るまでの過程がブラックボックス化されていて全く相手に伝えられていませんでした。相手に納得してもらうようにするためにも論理的思考が必要なんですね...。

 
レバレッジメモ

・人は頭とおしりだけでは納得できない
・仮説は間違っていていい
・その代わりに仮説が間違っていたらすぐに修正する
・調査と分析はクイック&ダーティー
・「事実」と「意見」を分離して議論する

 

ここには紹介しきれなかったのですが、MECEやイシューツリーなど社内で当たり前のように使われているフレームワークがたくさんありました。勉強は教えることが出来るけど勉強のやり方まで教えられないように、きっと社会に出ても仕事の取り組み方なんて教わらない。多くのビジネスパーソンが仕事のやり方に迷う一方でコンサルタントが優秀なのは、問題解決の「型」を身につける訓練をしているからなんだと思います。

ファンベース

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「ファンベースを基にしたマーケティング支援事業を作ります」といった声を発表するだけで、関連会社の株価が跳ね上がったかなり有名な佐藤尚之さんの本です。文頭に星の王子さまの詩を引用していて、ロマンチックな方だと思いました。

この本でのファンの定義は数ではなく、商品そのものに価値を感じている人。佐藤尚之さんが唱えるファンベースでは、売り上げの8割にあたる2割のファンを大切にすることで、ファンが新たなファンを連れてきてくれて中長期的に見て売り上げが安定するといいます。

テレビやインターネットの広告は短期施策として紹介されていますが、短期施策は決して無駄な投資ではなく、人々に認知してもらうためにも重要な施策であり、短期施策とファンベース施策をつなげることで相乗効果が生まれるらしいです。


この間読んだウルサス本に書かれていたスモール・ストロング・タイ(リアルな関係に近い濃密な繋がり)と考え方が非常に似ており、よりニッチが求められる時代になってきたのかなと思います。