落葉の栞

埋もれてしまった良書を貪る日々

善意という暴力

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10月になって本格的に軽減税率が始まりましたね。Twitterでは「イートイン脱税」vs「正義マン」がトレンドに上がったこともあり、色々と面倒なことになっているなぁと思う今日この頃です。一見するとこの「正義マン」は善意に基づいて悪を指摘しているように思われますが、実際のところバッシングすること自体が快感になっているのではないかと思うんですよね...。

と言うわけで、今回紹介するのは『善意という暴力』という本です。善意の正体とは「相手も自分と同じように感じるべきだ」という押し付けであり、人々が感情だけで動く社会は危ないと警告しています。


今日のレバレッジメモ


なぜ裏切り者に対して嫌悪感を抱くのか

進化生物学の立場からすると遺伝子を最大限に残すことが合理的。
一方で、共同生活を営む上で利益だけを受けて義務を果たさない人を許していると共同体を維持することができなくなってしまう。
→協力的な社会を築く進化の過程で裏切り者を排除しようとする認知メカニズムを獲得した。


スポットライト効果

人は、他人のことを自分のことのように思うことができる。しかし仲間とそれ以外では、仲間を優先する。人間は無限に共感できるわけではないのだ。

 「あなたが寄付をすれば、ロキアと言うこの写真の女の子の命が救われます。」
マラウイでは300万人を超える子供達が食料不足に苦しんでいます。」

この2つの文章でどちらが寄付を多く集めるか実験したところ、圧倒的にロキアに焦点を当てた前者の方が寄付が多かったんだそう。


理性について

・私たちの理性には、理解しやすいように物事を理解するだけでなく、理解したいように理解してしまうと言う困った性質がある。
・理論的であると言うのは、これまでにわかっている枠組みに現実を当てはめることではなく、わかっていないことに対しても合理的に対処することだ。


意志の強さと依存症

・繋がりを求めれば求めるほど、孤独になってしまう
・「薬物依存症の本質は、苦痛を緩和しようとする依存症である。そこから浮かんでくるのは、むしろ、自分の生きづらさをなんとかしようと必死になっている、普通の、むしろ意志が強いと言える人間の姿だ。」
(薬物依存症『ちくま新書』2018)
・「心の痛みを体の痛みに置き換えている。心の痛みは意味不明で怖いけど、体の痛みなら『あっ、ここに傷があるから痛くて当然なんだ』って納得できる」(薬物依存症『ちくま新書』2018)

昔からどうして自分で自分を傷つける人がいるんだろうと気になっていましたが、最後の一行で胸にストンと落ちました。
 

今日はこんな感じ。