落葉の栞

埋もれてしまった良書を貪る日々

予想通りに不合理

f:id:morimizuki:20190911163054j:plain


これまでの経済学では、人間は自己の利益を最優先して経済的に合理的な行動を取るとされていました。それに対して、必ずしも人間が合理的な選択を取るわけじゃなく、一時の感情に動かされて非合理的な選択を選んでしまうのではないか?と研究してきたのが行動経済学です。

「予想通りに不合理」という本。不合理なのに予想通りなの?と疑問に思うタイトルです。人間の行動はどこまでも不合理だけど予想できるんだということを様々な実験を基に説明しています。元々は授業の課題図書として買ったのですが、マーケティングに活かせそうな知識がたくさんありとても面白かったです。どの章を取ってもレポートが書けそうなぐらい面白いのですが、今回は2点だけ紹介したいと思います。

1.松竹梅の法則

新聞を購読するとしたらどの選択肢を選びますか?
A ウェブ版だけの購読      (59ドル)
B 印刷だけの購読        (125ドル)
B'印刷バントウェブ版のセット購読(125ドル)

とても有名なのですぐ見抜けるかもしれませんが、1回読むのであればウェブ版だけ選ぶのが合理的です。しかし同じ125ドルでどちらも読めるのならば、印刷版とウェブ版のセットを買ってしまおうと思う人は多いはずです。

私たちは物事をなんでも比べたがりますが、比べやすいものだけを比べて、比べにくいものは無視する傾向があります。AとBを比較するのは難しく、その一方でBとB'の比較は簡単なので相対的にB'が一番良い選択肢に見えますよね。

今後容姿が自分と似ているけれど、少しだけ整っている同性が合コンに付き合ってくれと言ってきたら...連れとして誘われたのか、それともオトリとして呼ばれたのか疑ってかかってしまうかもしれませんね(笑)

2.アンカリング

ハリー・ウィンストンで黒真珠をダイヤモンドと同じ列に並べたところ、今まで全く売り物にならなかった黒真珠が世界最高峰の宝石の仲間入りを果たしました。
たとえ最初の価格が恣意的でも一旦その価格が自分の中で定まると、ある品物やそれに関連する商品にいくら出すかが決まってくるのです。

アンカリングが最初の決断に基づいているというなら、そもそも値段が高めのスターバックスはどうやって私たちに受け入れられたのでしょうか。

スターバックスが成功した理由は、価格ではなく雰囲気に力を注いだから。

店に入ると豆の香りが立ち込むようにし、陳列ケースには見栄えのする軽食を並べています。それだけでなくショート・トール・グランデといったサイズ名からキャラメルフラペチーノ・マキアートといった商品名まで、ネーミングに強くこだわっているのが分かります。

他のコーヒーショップとは違って入店後の体験が格別なために、スターバックスの用意したアンカーを私たちはすんなりと受け入れてしまうのだそうです。