落葉の栞

埋もれてしまった良書を貪る日々

残酷な世界で生き延びるたった一つの方法

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私が橘玲さんの存在を知ったのは「言ってはいけない」が出版された時からです。橘さんの本には目を背けたくなるような残酷な現実が散りばめられており、遺伝に関するタブーを赤裸々に綴っているところに衝撃を覚えました。言い切ってしまうところに清々しさすら感じますよね。

今回の作品も遺伝のタブーと絡めつつ、自己啓発に対するアンチテーゼを主張しています。かく言う私も、(多くはアメリカ発の)自己啓発書が本屋にズラりと並んでいるのを見てモヤモヤを抱いています。自己啓発書は何故か抽象的なタイトルの本が多くイマイチ手に取ろうとは思えなくて。ただ天邪鬼なだけかもしれません。

「残酷な世界で生き延びるたった一つの方法」と言うタイトルですが、この本の中身の99.9%は「残酷な現実」がデータや統計をもとに詳細に書かれているので結論だけ早く知りたいという方はあまりオススメしません。


どうやら知能は「政治的には」遺伝しないという前提になっているみたいです。知能の差は就職の機会や収入を通じて全ての人に大きな影響を与えるため、もし政府がそれを認めてしまえば、不平等を認めてしまうことになるのです。それを認めてしまったら大騒ぎになることは目に見えていますよね。身長や運動神経の遺伝は当然のように語られるわけですが、こと知能や性格の遺伝になると何故かタブーになってしまうのは私も前々から疑問に思っていました。

また自己啓発の思想を根本的に否定しているのが痛快でした。売れる自己啓発書のほとんどは日々の難題を一発逆転の発想で解決しようとするものばかりで、根幹は環境を変えずに「自分が変わる」ことで出来ているんですよね。自分を中心とした狭い世界に閉じこもる風潮からして、自己啓発は私たちにウケやすいのかもしれませんが自分自身がそんな簡単に変わってしまったら逆に怖い。

自己啓発書には「能力は開発できる」「私は変われる」「他人を操れる」どれも魅惑的な言葉がズラリと並んでありますが、それを読んで人生が劇的に変わるかと言えばそうではないと思います。


現代の知識社会において、言語と数を扱う能力に秀でた人が収入に有利に結びつくようになっているのは紛れも無い事実です。だからこそ私たちは知識社会に適応できるように自分を変えようとしますが、何十年間積み上げてきたものを一瞬にして変えることなんてそうそう出来ません。それならば一体どうしたら私たちは幸せになれるのでしょうかね...。

 

長くなるのでまた今度ゆっくり話しましょう。


今日の名言

僕たちは幸福になるために生きているけど、幸福になるようにデザインされているわけではない。